殿下は殿下の心のままになさってください。
「なんなのよ、貴女! 一体何がしたいわけ? どうして自分の婚約者を奪われないようにしようと思わないんですか?」

「わたしは――――恋愛とか、よく分からないし。心を揺さぶられるのも嫌いで、平穏に生きていたいと思うタイプだし。
だから――――好きな人がいるのって素敵なことだなぁって。本当に好きな人がいるなら、その人と結ばれるべきだって思ったの」


 前世で、誰かを好きになるための努力はした。
 けれど、無理やり恋をしたところで、心はちっともときめかない。
 男性が好む可愛げのある女になるのもわたしには無理だった。

 だから、素直に恋愛ができる人が羨ましい――――好きな人がいるのなら、その想いを叶えるのが一番だと思った。


「――――だったら、マチルダは僕と結ばれなきゃ、だね」


 思いがけない言葉。背中を覆う温もり。
 振り返れば、ヴァージル殿下が優しく微笑んでいた。


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