殿下は殿下の心のままになさってください。
「なっ……殿下? 一体いつからそこに?」


 尋ねたのはカトレアだった。彼女はワナワナと唇を震わせつつ、呆然とこちらを見つめている。


「最初から。あのへんで隠れて話を聞いていたんだ。
マチルダが君に呼び出されたって聞いたからね。危ない目にあったらいけないだろう?」

「……そうでしたか」


 呼び出しを受けたことは誰にも伝えていない。おそらく、わたしに対して密かに護衛をつけていたのだろう。


「ところでカトレア。さっきから聞いていたら、随分な言い様だったね。罪悪感がどうとか、優越感がどうとか、楽しくないとか、色々」

「あ……それは、その…………」

「残念だけど、僕は君の優越感を満たすための道具になるつもりはないよ。君にはとても王妃は務まらないしね。
そもそも、僕が好きなのはマチルダであって、君じゃない。これから先も、君を好きになることはないよ」


 はっきりと、きっぱりと、ヴァージル殿下がカトレアに向かって言い放つ。彼女は真っ赤に顔を染め、脱兎のごとくその場から逃げ出していった。


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