【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
布を持って立ち尽くすニナと、ゴーンの話を聞いてクラレンスは勝手にそう解釈した。
二人は異変に気づいていたが制止を聞くことなくクラレンスはシャルルを罵ってしまう。

絨毯を汚すなと言ったクラレンスに対して、シャルルは迷うことなく膝をついて布で床に落ちた水を拭った。
それにはクラレンスも呆然としていたが、すぐに声を上げてシャルルの手首を掴んだ。
もしかしてしおらしい態度をとって、同情を引くつもりかと思ったが、「申し訳、ございません……すぐに絨毯を、綺麗にしますので」と言って再び作業を続けようとしている。
噂で聞いたシャルルだったら間違いなく怒り文句を吐き散らすのではないかと思っていた。
本性を見せるかと思いきや、明らかに瞳には怯えが見える。

クラレンスと目を合わせることなく震える唇が開いたり閉じたりを繰り返していた。
何かがおかしい……そう思った。
貧相な体と何かを誤魔化すようにベッタリと髪に塗ってある香油。
我儘令嬢とは思えない質素な格好と慎ましい態度。
目の前にいたのはイメージとも噂とも違う控えめな少女の姿があった。
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