離婚記念日
3月末になり、ようやく今の部署での仕事がひと段落した。
デスク周りを片付け、移動の準備をしていたら、年末に撮影した雑誌が山積みの書類の中から出てきた。
そういえば、と思いふと手にしてパラパラとページをめくった。あの時は忙しくて開きもしなかったな、と苦笑いしてしまった。
毎日何かに追われるよう仕事に没頭していた。きっとこの後経営に行っても同じだろう。必死に前に進むことが今自分にできることだ。
片付けをしていた今だからこそページをめくろうと思ったのだ。
ちょうど伊豆の特集も組まれていて、俺が環境問題を提議した自然の大切さを感じる記事になっていた。近くにあるパワースポットやお店も紹介されており、俺の書いた記事は少し真面目すぎる気がしていたが中和されたように思った。
パラパラとめくり続けていると肩を寄せ合う夫婦のカフェが紹介されていた。サンドやスープがなかなか美味しそうでふと目がいってしまった。
まさか……!
同じページにケーキを持つ女性が立っていた。エプロンをつけ、ケーキを手にしているのは莉美?
見つけた!
忘れもしないあの笑顔。
以前よりも少し痩せて見えるが、懐かしい笑顔に胸が締め付けられる。
会いたかった……。
食い入るように雑誌を見つめていると、俺たちが初めて行った旅行の場所に莉美がいるのだと気がついた。偶然ではないだろう。
今すぐに会いに行きたくてたまらない。
カフェの場所を確認し、雑誌を鞄に入れた。
ダンボールにあっという間に荷物をまとめるとフロアを出ようとした。
「あ、片寄さん。今日よかったらみんなで飲みに行きませんか?」
部下であるみんなが声をかけてくれる。いつもなら交流を大切にし、参加を決めるところだが、今日だけはどうしても頷けなかった。
「悪い。どうしても外せない用事ができたんだ」
「そうなんですか。残念です。移動してもまた飲みに連れていって下さいね」
もちろん、と大きく頷いた。
「みんな、色々と世話になったな。部署は変わるが、みんなとは変わらず良い関係でいたいと思う。本当にありがとう」
それだけ伝えるとダンボールを持ち、フロアを出た。
今はもう莉美のことしか考えられない。
停めていた車の後部座席に荷物を放り込むと俺は運転席に座った。
もういても立ってもいられなかった。
デスク周りを片付け、移動の準備をしていたら、年末に撮影した雑誌が山積みの書類の中から出てきた。
そういえば、と思いふと手にしてパラパラとページをめくった。あの時は忙しくて開きもしなかったな、と苦笑いしてしまった。
毎日何かに追われるよう仕事に没頭していた。きっとこの後経営に行っても同じだろう。必死に前に進むことが今自分にできることだ。
片付けをしていた今だからこそページをめくろうと思ったのだ。
ちょうど伊豆の特集も組まれていて、俺が環境問題を提議した自然の大切さを感じる記事になっていた。近くにあるパワースポットやお店も紹介されており、俺の書いた記事は少し真面目すぎる気がしていたが中和されたように思った。
パラパラとめくり続けていると肩を寄せ合う夫婦のカフェが紹介されていた。サンドやスープがなかなか美味しそうでふと目がいってしまった。
まさか……!
同じページにケーキを持つ女性が立っていた。エプロンをつけ、ケーキを手にしているのは莉美?
見つけた!
忘れもしないあの笑顔。
以前よりも少し痩せて見えるが、懐かしい笑顔に胸が締め付けられる。
会いたかった……。
食い入るように雑誌を見つめていると、俺たちが初めて行った旅行の場所に莉美がいるのだと気がついた。偶然ではないだろう。
今すぐに会いに行きたくてたまらない。
カフェの場所を確認し、雑誌を鞄に入れた。
ダンボールにあっという間に荷物をまとめるとフロアを出ようとした。
「あ、片寄さん。今日よかったらみんなで飲みに行きませんか?」
部下であるみんなが声をかけてくれる。いつもなら交流を大切にし、参加を決めるところだが、今日だけはどうしても頷けなかった。
「悪い。どうしても外せない用事ができたんだ」
「そうなんですか。残念です。移動してもまた飲みに連れていって下さいね」
もちろん、と大きく頷いた。
「みんな、色々と世話になったな。部署は変わるが、みんなとは変わらず良い関係でいたいと思う。本当にありがとう」
それだけ伝えるとダンボールを持ち、フロアを出た。
今はもう莉美のことしか考えられない。
停めていた車の後部座席に荷物を放り込むと俺は運転席に座った。
もういても立ってもいられなかった。