御曹司は初心な彼女を腕の中に抱きとめたい
あの日から時々メッセージの交換をしている。なかなか予定が合わず、あの後まだ食事には行けていないが、何気ないメッセージのやりとりが楽しくて仕方ない。

「みちる、最近楽しそうだね」

同僚の美和が昼休みに話かけてきた。彼女は入社以来仲良くしており、物怖じしない性格から犬猿する人もいるが私にとっては姉のような存在。

「そうかな?」

「そうだよ。なんだかウキウキしているっていうか、スマホを楽しげに眺めているのが珍しいなって思ってた」

美和にそんなふうに見られていたなんてなんだか恥ずかしい。

「それで何があったのよ。いいことあったんでしょ?」

「あ、うん。飯ともができたの」

「飯とも? 一体それは誰なの? 会社の人? 男の人?」

美和は身を乗り出し、矢継ぎ早に質問をしてきた。その姿に圧倒されつつ私は小さな声で答えた。

「前に三橋製薬の人と合コンしたでしょ。その時にいた人だよ」

「え? まさか。いつそんなことになったのよ。え? もしかしてあの暗そうな人じゃないよね?」

美和が言っているのは間違いなく奥山さんだろう。私と話した人なんて他にいなかったもの。

「多分その人。この前たまたま駅で会ったの。それで一緒に食事をしたんだけど、普通にいい人だったよ
。また一緒に食べようって話になって、それからなんとなくメッセージのやり取りをしているの」

「ちょっと、みちる。本気? 前髪で顔は隠れていたし表情は読めなかったよね。それに全然話に参加もしてこなかったじゃない」

「美和、そんなの私も一緒だよ。私も食べてばかりであの時他の人となんて話してないもの」

彼女の奥山さんへの印象はよほど悪かったのだろう。私のことをぽっちゃりと表現したのもマイナスだったのかもしれない。彼にとって悪意はなかったが女性からすれば言われて嬉しい言葉ではない。

「付き合ってはないよね?」

「うん」

「みちる、よく考えてからにしなよ。悪いことは言わない。すぐに決断しちゃダメ」

「付き合うなんて考えていないよ。友達になっただけだよ」

はぁー、と美和はため息をついていたが私には何故そうするのか分からなかった。
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