お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「分かった。じゃあ、リエートの後に続け。僕は最後尾につく」

「了解です」

 グッと拳を握り締め、気合い十分の特待生はリエートに連れられるまま階段を降りる。
────と、ここでレーヴェン殿下が光の玉を飛ばした。
『足元、気をつけてね』と言いながら、殿下も隠し通路へ足を踏み入れる。

「殿下、もう少し光を強くしてください。一度、扉を閉めます。誰かが間違って入ってきたら、大変なので」

 二段目辺りまで降りてから扉に向き直り、僕は手を伸ばした。
取っ手代わりの(くぼ)みを掴み、グイグイ引っ張る僕の前で、レーヴェン殿下は目を見開く。

「それは構わないけど、出る時はどうするんだい?多分、それ決まった手順じゃないと開かないよね?」

「そうですね。まあ、そのときはまた特待生の勘に期待しましょう。それでも無理なら、リエートに蹴破らせます」

 『こんなのどうとでも出来る』と言い切る僕に、レーヴェン殿下は苦笑を浮かべる。
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