お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「君は本当に大胆というか、豪快というか……まあ、分かったよ。いざという時はそうしよう」

 緊急事態ということを加味して、レーヴェン殿下はこちらの意見を受け入れた。
と同時に、光の明るさを上げる。
『さあ、行こう』と促す彼に頷き、僕は歩を進めた。
そして、ひたすら階段を降りていると────ようやく終着点……いや、扉が見えてくる。

 あの先にリディアが……。

 逸る気持ちを抑えつつ、僕は何とか最後の段を降り切った。
階段の踊り場のようなちょっと開けた場所で立ち止まり、リエート達と顔を合わせる。

「中の様子は?」

「分かんねぇ……特に物音も聞こえねぇーし」

 汚れることも厭わず扉に耳を押し当てるリエートは、不思議そうに首を傾げた。
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