いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
「悪い。少し感情的になった」
「大丈夫だよ。私こそ気持ちが重くなるような話をしてごめんね」
「麻衣子はなんでも自分が悪いと思い込む。少しは周りを頼れって前も言っただろ?」
「そうだね。長女気質なのか、なかなか甘えられなくて、でも最近は絵麻がしっかりして来て、いろいろ頼ってるんだよ」

 気まずい空気をなんとかしたくて話題を変えようとする。けれど夏目は寂しそうに眉を下げた。

「麻衣子、俺が父親になるって言ったらどうする?」
「……え?」

 予想外の言葉に麻衣子の思考は停止する。

(夏目君が父親? どういうこと?)

「あの子たちに父親がいたらいいと思ってるんだろう? 俺がその役目を担ってもいい」
「な、なに言ってるの? そんなこと無理で……」

 麻衣子は混乱して視線をさ迷わせる。彼の目は真剣で冗談を言っているのではないと分かるが、あまりに突拍子がなく感じたのだ。

「あの、夏目君の面倒見がいいのは知っているし、三つ子を可愛がってくれているのも分かってる。でも父親になるなんて言ったらだめだよ。夏目君はこれから結婚するだろうし、私たちのことよりも、自分の幸せを考えて」

 きっと彼は同情してくれているのだろう。実際彼に多大に助けられている。けれどこれは越えられない一線だ。

 彼にはとても感謝している。だからこそ普通の幸せを掴んで欲しい。
 そんな麻衣子の気持ちが伝わったのか、夏目はふっと笑った。

「そうか。いい考えだと思ったけど、麻衣子にとってはあり得ない話なのか?」
「うん……夏目君みたいな将来有望なお医者様が、同情で父親になるなんて言ったらだめだよ。それにあの子たちの父親はひとりだけだから」

 ふとした瞬間に、男親がいたらと思うことはある。それでも誰でも言い訳ではない。
 いくら親しい友人だとして無理だと麻衣子は思う。

「……そうだな。踏み込み過ぎたことを言って悪かった、困らせたよな」
「驚いたけど夏目君は悪くないよ」

 夏目が優しく目を細める。

「麻衣子に怒られたから父親は諦めるが、これからも医師としては口出しするからな」
「はい、今後もよろしくお願いします」

 いつの間にか気まずい空気は消え去り、麻衣子はほっとして微笑んだ。
 
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