いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
午後十時過ぎに夏目が帰って行った。遅いので車で送ると言ったが固辞されてしまった。
「お姉ちゃん、夏目先生と話せた?」
彼が玄関を出て行くと、絵麻が切り出した。
「うん、その件で絵麻に聞きたいことがあるんだけど」
ふたりでリビングに移動する。綺麗に片付いたダイニングテーブルで向き合うと、常にはない緊張感が漂った。
今日は夏目も絵麻もいつもと様子が違う。
その原因が分からないまま、麻衣子は口を開く。
「どうして、夏目君に裕斗さんのことを話したの?」
「夏目先生が、お姉ちゃんのことを心配していたから。小春の主治医になってから、すごく親身になってうちの家族を気にしてくれていたでしょ? 聞かれたのに黙っているのは悪いと思ったんだ……怒ってるよね?」
「ううん……絵麻は家族だし、いつも親身になってくれている夏目君も部外者じゃないと思ってるよ。ただ少し驚いただけ」
「夏目先生は、お姉ちゃんと子供たちの面倒を見てくれるつもりだったんだと思うよ」
「うん。父親代わりになってくれるって言われた」
絵麻は顔が一瞬曇った。
「……なんて答えたの?」
「もちろん断ったよ。子供たちは夏目君に懐いているけど、それとは話が別だし」
「そっか……やっぱりそうだよね」
「やっぱり? 絵麻は夏目君の話を知っていたの?」
「予想してた。ねえ、夏目先生がどうしてそんなことを言ったのか、お姉ちゃんは気づかないの?」
絵麻が麻衣子をじっと見つめる。
「どうしてって、それは彼が親切で……」
「そんなわけないでしょ? お姉ちゃんの子供だから、自分が面倒をみようと思ったんだよ! 夏目先生の気持ちに本当に気づかないの?」
大きな声を出さないように抑えていながらも、絵麻の強い感情の揺れが伝わってきた。彼女のいつにない態度に麻衣子は戸惑った。
(夏目君の気持ちって……)
絵麻は親切だからではないと否定した。それなら彼がいつも寄り添ってくれていた理由は――。
「まさか……」
麻衣子は思わず呟いた。ふとひとつの考えが浮かんだが、あり得ないと思う。絵麻が麻衣子の心情を呼んだように頷いた。
「夏目先生はお姉ちゃんへの気持ちを、かなり態度に表してたよ。でも気づかなかったんでしょう?」
「だって、子供が三人もいるんだもの。そういう対象になるわけないって」
「それだけじゃないと思う。お姉ちゃんは裕斗さん以外の男性が目に入らないんだよ。別れたけどずっと好きで、今でも忘れていないから」