いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 絵麻の強い言葉が胸を貫き、麻衣子は口を閉ざした。図星だったからだ。

 まるでこの世の男性は裕斗しかいないかのように、他の人なんて目に入らない。

 自分でも不思議なくらい、心が捕らわれて、幸せだった頃の記憶が色褪せないのだ。

「裕斗さんと会うとき、素直になった方がいいと思う。四年前に別れたのは間違っていたんだよ。あのとき、強い立場の政治家からいろいろ言われて、私たちは怖くなって逃げたけど、やっぱりおかしかったよね。お母さんが亡くなったのだって、あの人たちのせいか
もしれないのに、何も言えなくて後からすごく後悔した」

 絵麻の瞳に涙が滲み、揺らめいた。後悔と無念さで心がいっぱいなのだろう。その気持ちは麻衣子は痛いほど分かる。
 今更過去は変えられないけれど、思い出すと辛くなるのだ。

「……もう後悔したくないよね」

 麻衣子の心からの言葉に、絵麻も「うん」と同意する。

「だからずっとお姉ちゃんを説得しようと思っていたんだけど、その前に夏目先生に話したんだ。だっていつもお姉ちゃんに寄り添ってくれているのに、全然報われなくて見ていられなかった。お姉ちゃんが裕斗さんに会って寄りを戻したら、きっとショックを受ける。それなら初めから本当のことを知った方が夏目先生の傷も浅くて済むかと思ったの。私が口出しをすることじゃないけど、黙っていられなかった」

 絵麻はそう言い肩を落とす。

「ねえ、絵麻、もしかして夏目君のこと……」

 絵麻の言動は彼への好意を示しているように見える。けれど聞き出すのは躊躇われ、麻衣子は中途半端に黙り込む。
 絵麻は自嘲するように笑う。それは肯定だった。

「見込みはないって分かってるんだけどね」
「そんなこと……」

 絵麻を力づけたくても“ない”とは言えなかった。夏目は麻衣子に好意を寄せていてくれているのかもしれないのだから。

(どうして……もし夏目くんが)

「お姉ちゃん、今、夏目先生が私を好きになればいいと思ったでしょ? それ本人には絶対言ったらだめだよ」

 麻衣子が視線を落としたとき、絵麻が早口で言った。

「も、もちろん、言わないよ」

 恋愛面で鈍感な自覚はあるが、さすがにそこまでデリカシーがないわけではない。

「諦めた訳じゃないから心配しないで。それよりお姉ちゃんは自分のことを考えて。あと夏目先生には自然に接して」
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