いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 絵麻の勢いに押されて麻衣子は頷く。まるで諭されているようで、これではどちらが姉か分からない。

「うん、わかった」

 それでも妹の励ましがうれしくて、麻衣子は微笑んだ。




 裕斗に連絡をしたのは、彼と再会してから三日後のことだった。

 仕事の休憩時間にショッピングセンター内の、フリースペースに移動した。テラス席で人がまばらなので電話するのにちょうどいい。彼に貰った名刺を見ながら発信した。

 呼び出し音が鳴る間、麻衣子は緊張で自分の心臓の音がうるさく聞こえるほどだった。

 仕事で出られないかもしれない。あまりしつこく鳴らさずに切ろう。

 往生際悪くもそんな考えが浮かんでくる。

 けれど、麻衣子が思っていたよりもずっと早く、反応があった。

「はい」
「あ……麻衣子です。今話せますか?」
「大丈夫だ」
「あの、この前仰っていた、時間を取る件なんですけど」

 離れていた年月の長さと、関係性の変化から、以前のように親しく話すことに躊躇いがあり、出会ったばかりの頃のように敬語になってしまう。
 それに対して裕斗はなにか言うことがなく、優しい声が返ってくる。

「ああ、連絡してくれてありがとう」
「……子供は保育園に通っているんですけど、仕事をしているのでなかなか時間が取れなくて……申し訳ないんですけどこちらに来て貰って昼休憩の時間でも大丈夫ですか? 日程は合わせるので」

 裕斗が多忙なのは想像できるが、麻衣子が東京まで出るのは難しい。

「分かった。それじゃあ……そうだな。明後日の木曜日はどうだろう?」
「はい。大丈夫です」

 その後、時間と場所を決めて通話を終えた。

「……はあ」

 麻衣子はスマートフォンを握り締めて、大きな息を吐いた。

(ものすごく緊張した……)

 頭の片隅がぼんやりしてしまうくらい、決めていた台詞を言うので精一杯だった。

 裕斗の方は余裕がある様子で、てきぱきスケジュールを決めていたけれど。

 しばらくすると麻衣子は、持参したランチボックスをテーブルに広げた。

 朝ごはんの残りを詰めて来ただけの簡単なものだ。今日はおかずがほとんど余らなくて、寂しいランチだが、食欲がどこかに行ってしまったから丁度よかった。
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