いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
木曜日の午後一時。麻衣子は休憩時間になるとすぐに仕事を切り上げて、裕斗との待ち合わせ場所に向かった。
裕斗からの提案でショッピングセンター内の和食レストランで話すことになった。
五分前に到着したが裕斗は先に着いていて、窓際の四人掛けの席に着席していた。
ダークグレーのスーツに、清潔感がある白いシャツ、ネクタイは色味違いのグレーでスタイリッシュなコーディネートだ。
和のインテリアで渋い雰囲気の店内だが、裕斗の周りだけひと際華やいでいるように見える。
少しうつむいた横顔は憂いを帯びているが、麻衣子に気づくと朗らかな笑顔に変わった。
「お待たせしました」
「来てくれてありがとう」
「はい。あの、こちらこそ。遠くまでありがとうございます」
他人行儀な挨拶だが仕方ない。
彼の視線を感じながら正面の席に腰を下ろし、手にしていたミニトートを空いている椅子に置く。
すべての動きを観察されているような気がして、緊張感でいっぱいになった。
「あの、注文は済ませましたか?」
沈黙よりも会話をしていた方が緊張がまぎれると思い、麻衣子から声をかける。
「まだだ。麻衣子が来てから一緒に頼もうと思って」
裕斗はそう言いながら、麻衣子にメニューを渡す。
「ありがとう……」
麻衣子は受け取ると、裕斗の視線から逃れるように目を伏せた。
いつかだったか、ふたりでああだこうだ言いながら一緒にランチを注文したことを思い出したのだ。
心臓がどきどきする。彼といると心が過去に飛んでいくような気がする。すぐに思い出が浮かんでくるのだ。
麻衣子が銀むつの西京焼き定食を、裕斗が雉焼き定食を頼んだ。手持ち無沙汰になってしまったので、テーブルに置いてあったポットに入ったお茶をカップに注ぐ。香ばしい香りが漂った。
いつ話を切り出されるのかと身構えていたため、見るからに美味しそうな銀むつを味わう余裕もなかった。
裕斗からはときどき話題を振られるが、世間話のようなもので核心には触れない。
落ち着かないけれど、彼の話がどんなものなのかまずは聞きたいと思っているので、受け身になるしかない。
なんとか食事を済ませると三十分が経っていた。上司に昼休みを長めに取る許しを貰っているためいつもより時間に余裕はあるが、そろそろ話さないと間に合わなくなるかもしれない。心配になったそのとき、裕斗が改まった様子で口を開いた。