いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
「それもあります」

「俺は麻衣子の事情を受け止めたいと思っている。それでも迷惑だと思うならはっきり拒絶してほしい。そうでなければ俺は諦めない」

 裕斗が麻衣子を見つめながら断言する。その意思の強さに、麻衣子の心は大きく揺れた。

 やがていくつもの思い出が蘇る。

(そうだ……裕斗さんは寛容だけど、一度決心したら絶対にぶれない)

 彼の目は覚悟を決めている目だと思った。

「麻衣子、答えを聞かせてくれないか?」

「私は……」

 こんなふうに顔を合わせて、迷惑だなんて言えるはずがない。もし本音を隠して彼を突き放しても、きっと見抜かれてしまう。
 麻衣子は何も言えず、膝の上の手をぎゅっと握りしめた。

 休憩時間の終わりが迫ったため店を出た。

 裕斗の問いに返事は出来なかったけれど、彼は前向きに保留と受け取ったようだ。

「また連絡をする」
「……はい」

 彼が去っていく後ろ姿を見送り、麻衣子は仕事に戻った。


「裕斗さんとの話し合い、どうだった?」

 三つ子のお迎えをして帰宅をして、慌ただしく夕食を取り寝かしつけを済ませると、絵麻が待ちかまえていたように、聞いてきた。

「……やり直そうって言われた」

 子供たちと過ごしているときは考える余裕なんてなかったけれど、落ち着いた今、じわじわと実感がこみあげてくる。

 まだ信じられない気持ちが多いけれど、これは現実だ。

「よかったじゃない!」

 絵麻がぱんと両手を合わせた。

「もちろん、復縁するって言ったよね?」

「言ってない。断ってもいないけど。復縁まで言われるとは思っていなかったから、何も決心できなかった」

「あ……まあ、簡単には決められることじゃないよね。子供のことは話したの?」
「それも話す余裕がなかった。三つ子ってこともなにも言ってない」
「ええ、お姉ちゃん無言だったんじゃない?」

 絵麻は呆れてしまったようだ。

「落ち着いて考えたかったの」
「うん。よく考えた方がいいよ。そのとき私のことは気にしなくていいからね」
「え?」
「お姉ちゃんのことだから、私をセットで考えていそうで心配だよ。絵麻を置いて家を出る訳にはいかないって思ってない?」
「それは……」 

 図星だった。将来について考えるとき、絵麻の存在は抜きには出来ないと思っている。

 たったひとりの姉妹というだけでなく、これまでたくさん助けてもらった。
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