いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 彼女がいなかったら、三つ子をここまで育てることは絶対にできなかった。
 近所に友人や知人が出来たし、叔母もいる。けれどなんでも相談できるのは、絵麻だけだった。

「気にしないのは無理だよ。だって、もし私たちがこの家を出たら絵麻はどうするの?」

 賑やかなこの家も、絵麻ひとりでとても寂しいものになってしまう。

「私はそのままここに住むよ。都心でワンルームマンションを借りるより家賃が安いし、住みやすくて気に入っているから。お姉ちゃんたちが里帰りもできるでしょう?」

 絵麻は悩んだそぶりもなく、すらすらと答えた。その様子から彼女はこの問題について、以前から考えていたことが分かる。

「そっか……」

 現状から身動きできなくて立ち止まっていたのは、麻衣子だけなのかもしれない。
 絵麻も裕斗も前に進もうとしている。

(私も現実を見つめて頑張らなくちゃ)

「次に裕斗さんと会ったら、子供のことを打ち明けようと思う」
「そうした方がいいよ」
「絵麻……ありがとうね」
「え?」
「絵麻がいてくれてよかった」
「……なんだか照れるんですけど」

 絵麻は居たたまれないような顔をして、椅子から立ち上がった。

「コーヒーでも淹れるよ。飲むでしょう?」
「うん、お願い」

 しばらくするとリビングにコーヒーのよい香が漂いだした。
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