いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!

 麻衣子が務める花屋では月に一度、その季節の雰囲気に合わせてディスプレイを変更する。

 十月はハロウィンを意識して飾りつけた。来月、十二月はクリスマスがあり赤と緑を多く使うので、違う系統がいいだろう。

 スタッフで相談して、十一月はモーブカラーをメインに、華やかさの中に落ち着きがある雰囲気にしようと決めた。
 接客の合間に具体的なアイデアを出し合っていると、正午になった。

「ごめん、ちょっと出てくるね」

 麻衣子は時計を気にしながら席を立つ。今日、裕斗が再びこちらに来てくれることになっているのだ。以前と同じお店を予約しておくと言っていた。

 県境とはいえ、霞ヶ関からは一時間ほどかかるから毎回来て貰うのは気が引けるが、裕斗は気にするなと言う。

 でも、幼い子供がいると、どうしても行動が制限される。子供は可愛いけれど、不便もあるのだ。

 いきなり父親と言われる裕斗がそれを受け入れられるのだろうか。

 心配だが、麻衣子は今日彼に三つ子のことを告白するつもりだ。

 どんな反応が返ってくるのか怖いけれど、決心した。


「麻衣子」

 裕斗は今日も先に待っていて、麻衣子を柔らかな笑顔で迎えた。

「ごめんなさい。お待たせしました」
「俺もついさっき来たばかりだから大丈夫。それより仕事が立て込んでいたのか?」
「え?」

 心配そうな裕斗の視線が、麻衣子の胸元から腹部のあたりに向いている。

 どうしたのかと視線を下げた麻衣子は、「あっ」と高い声を上げた。

 仕事用のエプロンをつけたまま、来てしまったのだ。

 店名が大きく書いてあるようなものではなく、濃紺のシンプルなものだけれど、ずっとこの格好で歩いていたのかと思うと恥ずかしい。

 麻衣子は慌ててエプロンを外した。

「うっかりしちゃって」

 しなくてもいい言い訳が口から出てくる。裕斗はそんな麻衣子にくすりと笑った。
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