いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 小春は小さいし、裕斗に似ていない。まさか自分の子だとは思いもしなかったはずだ。

 それまで余裕があった裕斗の顔に、困惑と同様が浮かんでいる。

「あなたに知らせないまま産んで、今日までずっと隠していたことを申し訳なく思っています」

 そう言って、頭を下げた。

 沈黙のあと、裕斗がかすれた声を出す。

「ま、待ってくれ……どういうことなんだ? あの子が俺の子だなんて」

 裕斗は痛む頭を押さえるように、額に手を置く。

 こんなふうに動揺する彼を見るのは、初めてかもしれない。

「裕斗さんと別れた後に妊娠が発覚したの」
「……それならなぜ俺に知らせなかったんだ? 父親の俺に黙ったまま産んだ理由は?」

 裕斗の声が強いものになった。それほどの衝撃を与えてしまったということで、麻衣子は申し訳なさでいっぱいになった。

「知らせない方がいいと思ったんです。当時はいろいろな問題があって……でもすべて言い訳です。本当にごめんなさい」

 麻衣子が謝罪をすると、裕斗ははっとしたような表情になった。

「いや……俺の方こそ声を荒げて悪かった」
「裕斗さんが驚くのは当然です」
「たしかに驚いたが……麻衣子、一から説明してくれないか?」

 裕斗が懇願するように言う。麻衣子は頷き事情の説明を始めた。

 母が事故を起こした相手が、有名モデルでその父親が政治家だったこと。示談の後に母の容態が急変して寝たきりになってしまったこと。

 そして妊娠が発覚して、三つ子だったこと。

「……三つ子?」

 裕斗が信じられないといったように、動揺の声を漏らす。

 彼の気持ちは痛いほど分かる。麻衣子だって三つ子を妊娠していると知ったとき、強い衝撃を受けたのだから。

「裕斗さんが会った女の子が小春で、他に男の子がふたりいるんです。長男の大樹と次男の柚樹。ふたりは小春よりも大きくて元気いっぱいなんです」
「小春に、大樹に柚樹……」

 裕斗は子供たちの名前をゆっくりと呟くと、思うところがあるのか黙り込んだ。

「……麻衣子ひとりで三人も育てて来たのか?」

「妹に助けて貰いながら、今住んでいる家は叔母の伝手で借りているので、沢山の人の助けを借りて子育てしてきました」

「それでも母親ひとりでは大変だっただろう? 知らなかったとはいえ、俺は何もしてこなかった」

 まるで自分が悪いかのように、裕斗が顔をしかめる。
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