いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 中学生になったら、麻衣子と同じようにバスケ部に入部しそうだ。

(大樹は陸上部かな? それともサッカー部? 小春は文科系だよね)

 などとか考えていると、大樹の元気な声がした。

「ママのともだちと、なつめせんせいはどっちがはしるのはやい?」

 思わずぎょっとしてしまった。

 大樹に他意はなく、キラキラした目で麻衣子の返事を待っている。

 けれど、裕斗の前で、夏目の話題は避けてほしい。やましいことはないけれど、彼と家族ぐるみの付き合いがあることはまだ説明できていないのだ。

 離れていた四年間で、様々な出来事があった。怒涛の日々だったとも言える。

 大切な点は説明しているけれど、とても全ては話せない。

(夏目君の話をしたら、裕斗さんが誤解してしまわないかな?)

 かといって、幼い子供に「夏目先生のことは秘密にしてね」などと言えるはずがない。

 麻衣子は立ち止まり、大樹に答える。

「夏目先生もママの友達も、どちらの走るのが早いのよ」
「そうなんだー。ぼくママのともだちと、いっしょにかけっこする」

 大樹が無邪気に宣言する。

 三人を連れてゆっくり五分ほど歩くと、広場が見えてきた。

 人工芝が綺麗に敷かれ、周囲には樹木が整然と受けられている。

 少し先には湖があるが、まだ危険な気がする。

 はしゃいだ大樹が勢い余って湖に落ちる姿が頭に浮かぶ。

 やはり今のところは近づかない方が安心だ。

 広場で立ち止まり、周囲を見回していると、裕斗が近づいてきた。

 スリムジーンズに、ざっくりしたニットとかなりカジュアルな休日ファッションだ。ヘアスタイルが洗いざらしの雰囲気だからか、いつもと雰囲気が違ってみえる。

(子供が親しみやすい雰囲気にしたのかな)

 裕斗は三つ子を見ると、目を瞠った。話に聞いていても実際見ると驚いたのだろう。

 けれどすぐに笑顔になった。

「おはよう」
「おはようございます。裕斗さん、息子の大樹と柚樹と娘の小春です」

 裕斗は麻衣子の紹介に合わせて、三つ子たちに近づき視線を合わせるのように、その場で膝をついた。

「大樹くん、柚樹くん、小春ちゃん、はじめまして」

 裕斗をじっと観察していた三つ子が、慌てだす。一番初めてに返事をしたのは、柚樹だった。

「おはようございます。あめむらゆずきです」

 柚樹が丁寧に頭を下げる。

「柚樹くんは礼儀正しいな」
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