いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 裕斗がうれしそうに目を細めた。

「ぼくも! あめむらだいきです!」

 出遅れた大樹が、裕斗の前に飛び出した。

 裕斗は大樹の勢いに一瞬驚いたようだけれど、すぐに優しい笑顔になった。

「おはよう。大樹くんは元気いっぱいだな」
「へへ」

 大樹は褒められたと思っているのか嬉しそうだ。

 最後は小春だ。けれど人見知りをしているのか、麻衣子の陰にかくれてしまっている。

「小春。きちんと挨拶をしないと」

 麻衣子の声掛けで、小春はおずおずと裕斗を見上げる。

「……こはるです」

 集中していないと聞き逃してしまいそうなか細い声だった。

「小春は少し恥ずかしがり屋なところがあって」

 麻衣子がフォローすると、裕斗が頷いた。

「小春ちゃん、はじめまして」

 裕斗がとても優しく声をかける。怖くない相手と判断したのか、小春の緊張も解けたようだ。

「裕斗さん、お店が開くまで散歩をしようかと思うんだけど」
「ああ、そうしよう。向こうに大きな公園があるみたいだな」

 彼は麻衣子たちが来る前に、周辺をざっと確認していたようだ。

「ええ。公園には大きな遊具や、小川が有って、子供が遊ぶのにとてもいいところなの。のんびり散歩をするなら、湖の周辺もいいんだけど、子供三人だと目が届かなくて危ないから」
「それなら湖に行ってみるか? ふたりで見ていれば大丈夫だろう」
「あ……うん」

 たしかに麻衣子ひとりでは不安なシチュエーションでも、裕斗がいたら安心だ。

「みんな、今日は湖に行こうか」

 三つ子に声をかけると、ぱっと顔を輝かせる。

「やったー!」

 はしゃいだ大樹が、早速駆け出そうとする。

「あっ、待ちなさい! ゆず、はるとここで待ってて……」

 麻衣子が大樹を追いかけようとしたとき裕斗が大樹を容易く捕まえた。今にも道路に飛び出そうとしていたところを、ひょいっと持ち上げたようだ。

「わっ」

 持ち上げられた大樹が、足をぶらぶらしながら目を丸くしている。

「急に走ったらだめだ。もし車が来たら危ないぞ」

 裕斗が大樹を優しく諭す声がした。

「あ……うん、ごめんなさい!」

 大樹が素直に謝る。

「よし」

 大樹は怒られたというのに、ニコニコしながら裕斗に話しかける。

「おじさんは、はしるのはやい?」
「え……」

 裕斗が一瞬言葉に詰まる。きっと「おじさん」と呼ばれたことに驚いたのだろう。
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