いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 三歳児から見たら三十代男性はおじさんかもしれないが、日頃そんな呼ばれ方はしないだろうから。それにまだ打ち明けてはいないとはいえ、自分の子からおじさんと呼ばれるのはせつないはずだ。

「裕斗さん、ごめんなさい。だいに悪気はなくて、大人の男性はみんなおじさんに見えてしまうの」
「あ、ああ、そうだよな」

 裕斗は苦笑いをしながら、大樹を見つめる。

「大樹くん、おじさんのことは、名前で呼んで欲しいな」
「なまえ? ひろとくん?」

 大樹の返事に、裕斗はうれしそうに微笑んだ。

「ああ、そうだ。柚樹君と小春ちゃんも」
「はい」

 裕斗のお願いに、柚樹と小春も素直に返事をする。

「それじゃあ、行こうか」
 裕斗が大樹と柚樹を連れて湖に向かう。大樹は元々人見知りをしないし、柚樹は裕斗が信用できると思ったのか、まったく警戒せずについて行く。

 麻衣子は小春と手をつないで三人のあとについていった。

 湖は人工的につくったものなので、それほど大きくはないが、周辺を散策できるようになっていて、犬の散歩やジョギングをしている人たちとすれ違う。

「ここでおよげる?」

 大樹がじっと湖面を眺めながら言う。

「向こうの看板に遊泳禁止と書いてあったな」
「ゆううえいきんし?」

 大樹が不思議そうに首をかしげる。柚樹も理解できなかったようで、黙って裕斗の言葉を待っている。

「ごめん、ちょっと難しい言葉だったな。ここで泳いじゃいけないということだ」

 裕斗がゆっくりした口調で言い直すと、大樹と柚樹はがっかりした顔をした。


「大樹くんと柚樹くんは、泳ぐのが好きなのか?」
「ほいくえんのプールで、れんしゅうしました」
「ぼくとゆずは、みずにうけるし、およげるんだ。はるはみずがこわいんだって」

 柚樹と大樹が裕斗の質問に答える。

「そうなのか。すごいな」

 裕斗に褒められて嬉しいのか、大樹と柚樹のテンションが高い。

 仲がよい三人の様子をじっと眺めていた小春が、とことこ歩いて、裕斗に近づく。

「はると、ママはおよげないの」
「小春ちゃんはおよげるようになりたいのか?」

 裕斗が屈んで小春に返事をする。

「うん。だいちゃんとゆずちゃんみたいに、おかをあらえるようになりたい」

 それは水泳とは違うと思ったけれど、裕斗はおおらかに受け止めてくれた。
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