いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
麻衣子がイギリスにやって来て半年が経った。
海外生活にも英語での授業にもだいぶ慣れて、充実した毎日を送っている。
裕斗とは変わらずにメッセージのやり取りをしている。先月の休日は久々にロンドンに行き彼に会った。宿泊はしなかったので半日だけだったけれど、とても楽しいひとときで、駅で別れた後は寂しくなって気分が沈んだ。
恋愛に疎い麻衣子でも、もう自覚している。
(裕斗さんのことが好き)
彼に対する好意は恋愛感情だ。電話がない日は寂しくて声が聴きたくなるし、なかなか会えない距離と立場がもどかしく感じる。
それでも麻衣子は彼に告白するつもりはなかった。
裕斗と知り合ってから、外交官について調べてみた。
外交官にもいくつか働き方の種類があるが、裕斗は国家公務員総合職試験という難関試験を突破したキャリア官僚で、将来の幹部候補だそうだ。いずれは裕斗自身が大使としてどこかの国に赴任をする可能性もある。
やはり麻衣子とは住む世界が違うと感じた。彼のようなエリートのパートナーに相応しいのは、同じように高等は教育を受けた優秀な女性なのだろう。そうでなければ未来の大使の妻は務まらない。
万が一、麻衣子が彼の恋人になれたとしても、その先はない。そう分かっているから、麻衣子は自分の気持ちを表に出すつもりはなかった。
(彼は自分の仕事に誇りを持って、日本を守るために頑張っている尊敬する人。そんな人と仲良くなれただけで十分じゃない)
切ない気持ちを胸に秘めて一定の距離を保つようにしていた麻衣子の態度が裕斗にとって気楽だったのか、日に日に彼との距離が近づき、気づけば親しい友人と言える関係になっていた。
ふたりでロンドンから電車で一時間と少しのリーズ城まで日帰り旅行をしたこともある。
裕斗の希望で、お互いを名前で呼び合うようになり、話し方もだいぶ砕けたものに変化した。