いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!

「夏目くん、どうしたの?」

「休憩に行こうとしたら、ふたりが見えたから。小春ちゃん、シュークリーム買ってもらったんだね」

 夏目が小春に優しく声をかける。

「うん。みんなのぶんもかったの」
「そうか。小春ちゃんは優しいな」

 褒められた小春は嬉しそうにニコニコしている。夏目は小春の頭を優しく撫でてから再び麻衣子に目を向けた。

「小春ちゃんはあの店がお気に入りだな。よかったら今度お土産に買ってくよ」
「えっ? そんな気を遣わないで。ただでさえお世話になってるのに」

 恐縮する麻衣子に、夏目が笑う。

「おおげさ。小春ちゃんの笑顔が見たいだけだよ」

「夏目くんが面倒見がいいことは知っているけど、あまり甘やかすと教育によくないから。虫歯も心配だし」
「麻衣子だって甘いもの大好きだっただろ?」
「それは昔の話でしょう? 最近は控えてるよ」

 あれこれ話ながら受付カウンターの前を通りすぎる。その先はエントランスになっている。どうやら見送ってくれるらしい。

「ありがとう。貴重な休み時間にごめんね」
「いいって。麻衣子は気を遣いすぎるんだよ。なんでもひとりで解決しようとしないで、もう少し回りを頼った方がいい。誰も迷惑だなんて思わないから」
「うん……そうだね」

 長女気質だからか、昔から人に頼るのは苦手だ。

 恐縮してしまって居心地が悪くなるし、自分でできることは自分でしたい。けれど子育てをしている今は、自分の意向よりも子供たちにとって良い方を選ばなくては。変に意地を張るのはよくない。

 そう頭では分かっているけれど、やはり夏目には頼りきるのは駄目だと思う。どうしても線を引いてしまうのだ。

 もし彼が同性の友人だったなら、今よりも躊躇いなく親切を受けられたのかもしれない。

 母親になったからなのだろうか。信頼できる友人だとしても、異性とはある程度の距離を置かなくてはいけないような気がしている。

(でもあまり頑なにならないようにしなくちゃ)

 麻衣子は夏目のアドバイスを受け入れる意思を表すように微笑んだ。

「いろいろありがとう」

 夏目がほっとしたように表情を和らげる。

「ああ。気をつけて帰れよ」
「うん……」

 頷いた直後、夏目の肩越しに見えた人影に、麻衣子ははっと息をのんだ。

「どうしたんだ? 急に真顔になったけど」
「……知っている人がいるかと思ったんだけど、人違いだったみたい」

 怪訝そうな夏目に、麻衣子は内心の動揺を隠しながら答えたが、心臓が激しく波打っていた。
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