いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
(驚いた……裕斗さんかと思った……)
視界の隅を過った男性の姿が、裕斗のように見えたのだ。
長身ですっと背筋が伸びた均整の取れたスタイル。颯爽と歩く姿。雰囲気がすごくよく似ていた。
受付カウンターの前を足早に通り、すぐに麻衣子の視界から消えてしまったから、はっきり顔を見た訳ではない。
(裕斗さんの訳ないじゃない。彼は海外にいるんだし、もし帰国していたとしても、こんなところに用があるとは思えないもの)
裕斗の職場である外務省は霞ヶ関にあるし、実家は成城だと以前聞いた。埼玉の病院は彼の生活エリアとかけ離れている。
それでも、そわそわと気持ちが落ち着かなくなった。
今すぐこの場を離れた方がいい。そんな気がするのだ。
「小春、帰るから夏目先生に挨拶をして」
無意識に早口になってしまったが、小春は礼儀正しく夏目に挨拶をした。
「なつめせんせい、さようなら」
「小春ちゃん、またね。気を付けて帰るんだよ」
「はい」
夏目に会釈をしてから小春の手を引き、駐車場に向かう。
病院から自宅までは車で十分程度と麻衣子ひとりなら歩ける距離だが、小春を連れているときは車を利用している。
病院の広い中庭では、散歩中の入院患者や休憩中と思われる病院スタッフの姿がある。麻衣子と小春はゆったりとした光景を横目に、少し離れた駐車場に足を進める。
「ママ、はやくかえってシュークリームたべたいの」
小春はそろそろ待ちきれなくなったようで、督促してきた。
「うん、急いで帰ろうね」
あと少しで、中庭を抜けるそのときだった。