いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 裕斗は僅かに目を見開いた。

「……結婚したのか?」
「いえ、結婚はしていません」
「それは……」

 裕斗は何か言いかけたけれど、口を閉ざして黙ってしまった。

 気まずい沈黙が訪れる。

 彼は小春を自分の娘だと考えたのかもしれない。そして父親がいないと知り確信を深めた。

 もし彼に子供の父親は自分か?と聞かれたら、どうすればいいのか。

 これまで考えなかったわけではない。けれどどうしても結論はでなかった。

 そもそも会うことがないと思っていたのだから……。

 しばらくすると、裕斗がぎこちなく口を開いた。

「かわいい女の子だな……二歳くらいか?」
「えっ?」

 麻衣子は思わず瞬きをした。

「違ったか? 弟の子供が二歳なんだが、同じくらいの年に見えるから」

(小春が小さいから、誤解しているんだ!)

 大樹だったらむきになって「三歳だよ!」と叫ぶところだ。柚樹でも不満な顔をするだろう。けれど人見知りの小春は反論せずに麻衣子にぴたりとくっついている。

「あの、ごめんなさい。そろそろ帰らないといけなくて」

 質問に答えずに、急ぎのふりをして話題をそらした。

 気まずさがこみ上げたが、嘘はついていない。ただ訂正しなかっただけだと自分に言い訳をする。

(仕方がないじゃない。本当は三歳だと答えたら彼は自分の子供かもしれないと疑うはずだもの)

 卑怯だと分かっている。それでもまだ真実を打ち明ける勇気がない。
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