まだ誰も知らない恋を始めよう
 すっかり考え込んでしまった彼が無言になったので、わたしは兄に明日魔法学院に行き、レベッカ・ヴィオンを訪ねる事と。
 そして出来れば、わたしがロジャー・アボットに会いに行っても構わないか、聞いてみた。

 彼が兄の言うような人物で、ステラに対して本気なのか、今度こそ自分の目で確かめたかった。


「アボットにか? 何て言って会うつもりだ?」

「シーバスについては絶対に口にしないから、信用して。
 今思い付いたのは
『日曜日に、フィンと約束してたんですけれど、すっぽかされまして。
 ずっと大学にも来ないし、自宅へ伺うのははばかれるので、親しいと聞いていた従兄の貴方に会いに来ました』かな」

「……御曹司のガールフレンドの設定で行くなら、もうちょっと小綺麗にして行かないと。
 単なるファンだと思われて、アボットにも軽くあしらわれるぞ」

 ……身内と言えども、容赦が無い。
 ロジャーは社会人だ、こちらもきちんとしていかなくては、舐められるって事ね。


 それから兄から魔法学院のレベッカ・ヴィオンさんについて事前情報を貰った。 

 通称、赤毛のベッキー。
 年齢は定かではないけれど、未婚女性で、最近養子を取られた女傑だという。
 これまで何度も魔法庁入りを打診されているのに、その度に断っていて
「学院でガキどもをいびって鍛える方が楽しい」のが、その理由。
< 106 / 289 >

この作品をシェア

pagetop