まだ誰も知らない恋を始めよう
「で、誰が赤毛のベッキーを紹介してくれるって?」
「シーズンズで同僚のジェラルディン・キャンベルって女の子で、まだ高等学院の3年生なんだけどね。
2人がどんな関係なのかは聞いていないけど?」
「へー……キャンベル……」
それ以上は特に聞かれも、確認もされなかったので、少し拍子抜けした。
兄は昔からわたしの交友関係を、気にしていた。
わたしが親しくなった人から傷付けられないか、心配させていたからだ。
22時前になっていたので、すでに終バスを逃していたフィニアスを兄が自動車で送ることになり、2人を見送る。
「魔法学院に行くのはいいが……気を抜くなよ。
赤毛にエルの能力を気付かれたら、面倒だ」
兄からの注意に頷いて、わたしはフィニアスに向き直った。
「じゃ、今日もごちそうさまでした。
また明日魔法学院の前で待ってるよ」
「うん、その後時間があれば、ロジャーに会おう。
あまり小綺麗には出来ないけれど、一張羅を着て眼鏡は外していくから」
「 ……いいね、楽しみにしてる。
おやすみなさい」
彼は気持ちの切り替えが、まだ上手く出来ないのだろう。
それでも、いつものように明るく見せようとするぎこちないフィニアスの微笑に、ぎゅっと心臓を鷲掴みにされる。
勝手に暴れだす胸を押さえたわたしを、兄が何とも言えない眼差しで見ていたのは、知っているが。
この気持ちは、兄には見えないはずだ。
「シーズンズで同僚のジェラルディン・キャンベルって女の子で、まだ高等学院の3年生なんだけどね。
2人がどんな関係なのかは聞いていないけど?」
「へー……キャンベル……」
それ以上は特に聞かれも、確認もされなかったので、少し拍子抜けした。
兄は昔からわたしの交友関係を、気にしていた。
わたしが親しくなった人から傷付けられないか、心配させていたからだ。
22時前になっていたので、すでに終バスを逃していたフィニアスを兄が自動車で送ることになり、2人を見送る。
「魔法学院に行くのはいいが……気を抜くなよ。
赤毛にエルの能力を気付かれたら、面倒だ」
兄からの注意に頷いて、わたしはフィニアスに向き直った。
「じゃ、今日もごちそうさまでした。
また明日魔法学院の前で待ってるよ」
「うん、その後時間があれば、ロジャーに会おう。
あまり小綺麗には出来ないけれど、一張羅を着て眼鏡は外していくから」
「 ……いいね、楽しみにしてる。
おやすみなさい」
彼は気持ちの切り替えが、まだ上手く出来ないのだろう。
それでも、いつものように明るく見せようとするぎこちないフィニアスの微笑に、ぎゅっと心臓を鷲掴みにされる。
勝手に暴れだす胸を押さえたわたしを、兄が何とも言えない眼差しで見ていたのは、知っているが。
この気持ちは、兄には見えないはずだ。