まだ誰も知らない恋を始めよう

35 彼の恋人に立候補したわたし

 わたしは貴方を失えない、失いたくない。
 だから、決めた。


「今から、貴方と一緒にご自宅に伺ってもいい?」

「……ダニエルがうちに?」

「それで、このお借りした指輪、使わせて貰ってもいい?」

 わたしでは大学の友達だと言って訪ねても、フレディとは違い、十中八九会って貰えない。
 ……だけど、今のわたしにはフィニアスから預かったお母様の指輪がある。


「それ、貸したんじゃなく……」

「貴方が言わんとする事は、理解した。
 フィニアスがこれ以上は危ないと判断したのなら、尊重する。
 だから、貴方は自宅に戻って、魔法庁が動くのを待ってて」


 魔法学院を辞する時、ベッキーさんが言ったのだ。

「今まで、2流だったメイトリクスひとりでは何も出来ないだろうと捜索を後回しにしていました。
 けれど、ペンデルトングループの後継者に黒魔法を掛けたとなれば、あいつ自身の犯罪が立証されて、こちらも動き易くなります」

 そうは言っても、魔法庁は直ぐには動かない。
 シーバス夫妻を逮捕出来る状況になるまで、関係各所と共に様子見になる。 
 それこそ、彼等に任せてたら何年後になるか……
 

< 138 / 289 >

この作品をシェア

pagetop