まだ誰も知らない恋を始めよう
 まだ悪臭による頭痛が治まらないようで、叔母は今も顔をしかめて、こめかみに手を当てている。
 痛みの原因のジャック・メイトリクスについて説明をする前に、これまでの話を聞いて貰う事にした。


 それに先立って、わたしは窓を開け、部屋の空気を入れ換えた。
 叔母の頭痛が少しでもましになり、落ち着いて話を聞いて貰うために。


   ◇◇◇


「……あぁ、そう言う事ね。
 貴女の力を隠している兄さんとモーリスに協力して貰うのは難しいから、わたし、と言う訳ね」

 長い長い今日までの話(兄の特務については隠した)を聞き終えた叔母の第一声がこれだ。
 それから大きくため息をつかれた。


「……」

「こんなお願いで、すみません」

「……その指輪を渡した彼は」

「フィニアスですか?」

「ペンデルトンの御曹司本人は、早く解術しないと、もしかしたら命まで危ないかも、は知らないのね?」

「そうです、フィニアス本人には聞こえないように、オルくんはわたしにだけ読み取らせました」

「どうして、その子はそんな肝心な事を貴女にだけ教えたの?」

 まぁ、誰が聞いても、そう思うよね。

 
「これは、わたしの想像でしかないんですが」

 わたしはそう前置きをして、兄に話した通りにオルくんの発言と行動と考えそうな事を、叔母にも話した。
 それを聞いた叔母の結論がこれだ。

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