まだ誰も知らない恋を始めよう
 今夜は嬉しくて、いつもよりワインを飲んでしまった、と眠そうな母が先に出て寝室へ向かうのを父が送り届けて、書斎へ戻ってくるなり、俺に尋ねた。


「お前が頼んできた魔法士の件だが。
 魔法庁に依頼して、派遣して貰うのは駄目なのか?」

 毎度思うことだが、母の前での父の表情と声は、俺に見せるものとは全然違う。
 ダニエルに接していた時も、また違う人間みたいで、俺もいずれはそういった術を身に付けないと駄目なんだろうな。



─ 公的機関を使うと、申請だの調整だので時間もかかりますよね

─ 俺は早く解決したいです

「それはどうとでもなるから、気にするな。
 だが、魔法庁に登録もしていない個人で動く魔法士を雇ってこの件を依頼したら、それこそ後々ややこしくなる事も覚悟していた方が良い」

─ 後々ややこしい、と言うのは、依頼内容を使って

─ 俺が脅迫される可能性もある、と言うことですか?

「そうだ、だがお前個人ではなく、ペンデルトンが、だ」


 俺が思い描いた、メイトリクスに同じ魔法士を使う、と言う方法は、そんなに危うい事なのか……


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