まだ誰も知らない恋を始めよう
　サミュエルが給仕を終えて出て行くと、父からも食べるように勧められた。


「朝も昼も食べてないらしいな」

　コツンと１つ、テーブルを叩いた。
　その上には、昨日と同じノートとペンも置かれていて、そこで初めてこれは俺の発言ノートなのか、と理解した。


　
　父とサミュエルとバネッサ（会ってないけど）からの『食え』の圧を跳ね除ける事が出来ない俺が、サンドイッチを食べ始めると、さっきダニエル嬢と会った、と父がさらっと口にした。

　ダニエルとさっき、会った!?


「言っておくが、私から会いに行ったのではない。
　彼女から連絡が来て、叔母のレディ・アリア・マッカーシーも一緒にだ」　


　慌てて、口の中のパンを飲み込み、ひったくるようにしてノートに書いた。


─ どうして

　こんな簡単な、短い文章なのに、字が乱れて上手く書けない。


「ダニエル嬢自身の口から、どうしてお前を見つけられたのかの話をしてくれて、自分の力とレディ・アリアの力についても教えて貰った」


　昨日、ダニエルが明日にでも叔母を訪ねる、力を貸して欲しいと頼む、と話していた。
　俺が家に戻るなら、自分ももう関わらない、と約束する前だ。


　じゃあ、あれは……俺を帰すためにそう言っただけで。

　今日、彼女は叔母上に会いに行き、協力を頼んでくれていたのか!?

　
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