まだ誰も知らない恋を始めよう

54 敵かもしれない父と対峙した俺

 父から、ダニエルと叔母上のレディ・アリアに会った、彼女達の能力を教えて貰った、と聞いた俺は複雑だ。


 もちろん、俺のために動いてくれたのは嬉しいが、それと共に。
 あんなにお願いしたのに、どうして分かってくれなかったんだ、とやりきれなさもある。


「お前からは、もうこの件から手を引いて欲しいと頼まれているが、そんなに悠長にしていられないと、ダニエル嬢の方から話をしたいと訪ねて来てくれたんだ」


 悠長にしていられない?
 彼女は、俺には魔法庁がメイトリクスを捕まえるのを待てばいい、と言っていたはずじゃ……


「レディ・アリアの能力は『悪意を嗅ぐ力』だそうだ。
 会った途端に彼女に言われたよ。
 私からメイトリクスの悪臭がする、とな」

 悪意を嗅ぐ力、メイトリクスの悪臭、それが父から匂うと言われた、
 それはつまり……思わず立ち上がって、父の顔をした男から距離を取る。


「あぁ、安心しろ。
 私はメイトリクスじゃない」

 安心出来るか!
 本人が、私はメイトリクスだと認めるはずが無いだろ!
 お前、父さんをどうした! 俺と同様に消したのか!?
 正体を知られた2人に何をした!?


 相手は魔法士だ、魔力の無い俺ではどうしようもないのかもしれないが、それでも。
 握った拳に力が入る。


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