まだ誰も知らない恋を始めよう
 微笑むペンデルトン氏に、焦るわたし。 
 それでも、それで1日でも早くメイトリクスを見つけられるのならと、ご招待を受けた。


 そして、ホテルを出て、家まで送ってくださる自家用車の車内で、2人きりになった途端に叔母が開口一番に言ったのは。


「ペンデルトン家の夕食会、ご招待されたのはいいけれど、貴女ドレスはあるの?」だった。
 叔母の1番の心配事はメイトリクスより、わたしのドレスだった!


「ワンピースなら……」

 わたしが説明したのは、明日クリーニングに出す予定だった、例の一張羅のディープグリーンのワンピースだ。
 昨日も着てペンデルトン家を訪問してるけど、これしか無いので仕方ない。
 

「 昨日も着た入学式のワンピース!?
  ……あのね、ペンデルトン本家の夕食会よ?
 正式な晩餐会では無いけれど、普通の家庭のホームパーティーに、お呼ばれしたのとは違うと思ってね?
 フルレングスのイブニングドレスとまではいかなくても……
 分かるでしょ、入学式よりもドレッシーな感じに」


 ……そんな事を言われても。
 自慢じゃないが、わたしがこれまで参加した事があるのは、卒業式や入学式と言った『式』だけで、舞踏会もお茶会も、もちろんアッパークラスの夕食会、なんて『会』が付くものには出席した事がないのだから、突然ドレッシー、と言われても持っていない。

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