まだ誰も知らない恋を始めよう

57 敵か味方か、仕分けをするわたし

 わたし達が乗った移動車が両の鷲が見守る門を抜けて。
 
 速度を落として、ゆっくり通り過ぎる時に確認した警備員はビリー・ジョンソンさんではなくて別の人だったけれど、彼からは何も見えなかった。  

 これで、今日はメイトリクスではないと確認が取れたのは、バーグマンさん、移動車の運転手さん、警備員さんで3名。 
 頷く叔母と無言で、互いの目と目を見交わした。

 
 その後は誰とも会わずに、今日も抱えた水瓶から勢いよく水を噴き出す女神の噴水を設えた玄関前に到着した。
 
 昨日、ペンデルトン氏が話していた通り、数人の庭師が焦った様子で玄関扉前に飾られた豪華な花器に生けられた花の入れ替え作業をしていた。

 多分、移動車の発車を見送って直ぐに、バーグマンさんがペンデルトン氏に連絡を入れ、当主からいきなり花の交換を申し付けられた庭師達が、夕食会に間に合うよう慌てて総出で作業をしているのだ。
 わたしと叔母の視界に入るように。

 彼等の顔を順番に見ているわたしに、叔母が囁いた。


「わたしは何の臭いも感じないわ、貴女は何か読み取れた?」

「いえ、わたしも彼等からは何も。
 何人かは毒付いているけれど、それは急に残業させられた文句だけです」

< 234 / 289 >

この作品をシェア

pagetop