まだ誰も知らない恋を始めよう
解術とはどんなものなのか……特に説明も無く、それは始まった。
ベッキーさんは、倒れたままにしていたメイトリクスを無詠唱で持ち上げ、奴の意識を戻し、次は声に出して隷属の呪文を唱え始めた。
「神より与えられし力を曲げ、悪魔に心を捧げし者よ、今こそ悔い改め、その悪しき行いを贖え。
主となった我の言葉を絶対とし、これを尊び守ると誓え。
もしその言葉に抗うならば……」
強引に覚醒させられたメイトリクスの顔色は悪く、四肢はぶるぶると震えていた。
静かに唱えられる呪文に合わせて、周囲から音が消えた。
圧倒的な魔力を目の前にして。
それが俺を助けてくれる力だと分かっていても、怖くて仕方がない。
今はまだ身体に変化は感じられないが、やたらと力んだ俺の手に、ダニエルがそっと触れ、他の誰にも聞こえない小さな声で囁いた。
「今日まで本当にありがとう。
わたしは、貴方が好きです」
音が遮断された世界で、何故か彼女の囁きだけが聞こえた。
その突然の、余計なものの無い、どシンプルな告白に、身体の震えが止まった。
もう一度聴かせて、俺も君が好き、と。
もしかすると、怯えて緊張していた俺に気付いて、リラックスさせようと、言ってくれたのかもしれないけど。
それでも、返事を返したかったのに。
一瞬で、目の前が暗転した。
ベッキーさんは、倒れたままにしていたメイトリクスを無詠唱で持ち上げ、奴の意識を戻し、次は声に出して隷属の呪文を唱え始めた。
「神より与えられし力を曲げ、悪魔に心を捧げし者よ、今こそ悔い改め、その悪しき行いを贖え。
主となった我の言葉を絶対とし、これを尊び守ると誓え。
もしその言葉に抗うならば……」
強引に覚醒させられたメイトリクスの顔色は悪く、四肢はぶるぶると震えていた。
静かに唱えられる呪文に合わせて、周囲から音が消えた。
圧倒的な魔力を目の前にして。
それが俺を助けてくれる力だと分かっていても、怖くて仕方がない。
今はまだ身体に変化は感じられないが、やたらと力んだ俺の手に、ダニエルがそっと触れ、他の誰にも聞こえない小さな声で囁いた。
「今日まで本当にありがとう。
わたしは、貴方が好きです」
音が遮断された世界で、何故か彼女の囁きだけが聞こえた。
その突然の、余計なものの無い、どシンプルな告白に、身体の震えが止まった。
もう一度聴かせて、俺も君が好き、と。
もしかすると、怯えて緊張していた俺に気付いて、リラックスさせようと、言ってくれたのかもしれないけど。
それでも、返事を返したかったのに。
一瞬で、目の前が暗転した。