内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

(俺を意識しているのか?)

 子どもじみた感情だが、これだけ露骨に反応されると気分がよくなってくる。
 蒼佑は油断するとニヤつきそうになる顔を隠し、平静を装った。
 璃子の父親としてではなく、ひとりの男としてもっと意識してもらわなければ困る。
 これから先、夫婦として長年連れ添っていくつもりなのだから。
 朝食後は小牧に見送られながら、三人一緒に車に乗り込み屋敷を出発する。三角家の屋敷は市街地まで距離があるので、いつも車で移動している。
 保育園に到着すると、藍里と璃子が先に車から降りる。
 藍里は璃子を預けたあとは、職場まで電車で出社する。送るから一緒に乗っていけばいいと何度すすめても、電車の方が落ち着くとなんだかんだいつも断られてしまう。

「藍里」
「はい?」

 蒼佑は後部座席の窓を開け、園舎へ向かう藍里に声を掛けた。

「今日は七時頃に帰るから、夕食はみんなで食べよう」
「わかりました」

 ふたりが保育園の門扉をくぐったのを見届けてから、蒼佑は会社へ向かった。
 夕食の時間が今から楽しみだ。
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