内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
「ただいま」
「パパ~!」
仕事を終え約束の時間通り帰宅すると、リビングに入るやいなや璃子が脚に飛びついてくる。
「璃子、ただいま!」
蒼佑は璃子を頭上高く抱っこしてやり、メリーゴーランドのようにグルグルと回ってやった。
「きゃははっ!」
璃子は楽しそうに手足をばたつかせ、甲高い歓声を上げる。
子どもがこんなにかわいいものだなんて、璃子と出会うまで知らなかった。
一緒に暮らしてみると驚くことばかりだ。日々成長していく姿に、胸いっぱいに愛しさが広がっていく。
「おかえりなさい、蒼佑さん」
「ただいま、藍里」
璃子を床に下ろすと、今度は愛する妻が出迎えてくれる。
「今日のお夕食は小牧さん特製のビーフシチューだそうです」
「それは楽しみだな」
心待ちにしていた夕食の時間は、璃子が目をキラキラさせながら保育園で起こったことを話してくれた。
「おみずをじゃーってしたの!」
「今日は園庭で水遊びをしたんですって。楽しかったの?」
「うん!」
拙い言葉で一生懸命伝えようとする、その仕草ひとつひとつが尊い。
保育園がよっぽど楽しいのか、璃子は毎日生き生き登園している。一緒に遊んでくれるお友達もたくさんできたみたいだ。