内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「必要な物は外商に頼んでくれ」
「外商?」
「公の場に出るならそれなりに準備が必要だろう? 子連れだとゆっくり試着もできないだろうし、小牧さんに言えば手配してくれる。遠慮なく買ってもらってかまわないから」
たしかに、式典にお呼ばれするならいつも着ているような安物のスカートとブラウスでは心許ない。
デパート側が上顧客に対し、品物を持ってきてくれる外商というサービスがあるのは知っていたけれど、まさか自分が使う側になろうとは。
(小牧さんに相談すれば大丈夫よね?)
蒼佑の指示に従い小牧に相談すると、すぐに段取りが組まれた。
「はじめまして、奥様。いつも三角様には当デパートをご贔屓いただいております」
数日後、三角家御用達の老舗デパートの外商担当者はすぐに飛んできた。グレーのパンツスーツにシニョンを髪に結わえた藍里と同じ年齢ぐらいの溌剌とした女性だ。
名刺をもらい、挨拶を済ませるとリビングには何着ものワンピース、靴、バッグが次から次へと運び込まれる。
担当者は持ち込んだ商品を段ボール箱から出しては、持ち込んだハンガーラックにかけていった。
あっという間に即席の販売スペースができあがる。