内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「いかがでしょうか? こちらはこの夏の新作でして、サラリとした着心地がおすすめです」
「は、はい……。素敵です」
藍里はしどろもどろになりながら、担当者にオフホワイトのワンピースを身体にあててもらった。
事前にどんな用途の服がほしいか、好みの色やスタイリングを事細かにヒアリングされていたけれど、いざ買うとなったら尻込みしてしまう。
よくよく考えてみれば、璃子が生まれてから着飾ってどこかへ出かける機会そのものがなかった。
近所の公園やスーパー、保育園、職場といった日常の範疇では高価なワンピースを着る必要もない。
しかし、そうは言っていられない。蒼佑に恥をかかせるわけにはいかないのだ。
藍里はひとまずは見繕ってもらった服を次々試着していった。
「奥様、こちらのワンピースはいかがでしょうか?」
担当者が次に取り出したのはAラインのロイヤルブルーのサマーワンピースだ。
両袖がレースになっており、ウエストはリボンで結ぶタイプである。
「おひめさまだあ!」
試着を終えた藍里を見て、璃子はこの日一番の歓声を上げた。
「そ、そう?」
「ええ! とってもお似合いですよ」
派手過ぎないかと心配だったが、璃子だけではなく付き添いの小牧にも褒めてもらえたら、その気になってくる。