内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
プレオープン式典の当日。
(変なところはないよね?)
姿見の前に立った藍里は、プロの手で磨かれ見違えた自分の姿を何度も確認した。
藍里の顔立ちに合わせたヘアメイクも、爪を彩るネイルも、小牧が手配してくれた専門家が朝から屋敷にやって来て施してくれた。
「そろそろ時間だ。支度はできているか?」
「あ、はい。大丈夫です」
藍里は蒼佑に手を引かれ、ロータリーに横付けされた車へと向かった。
ロータリーにはお見送りの小牧とベビーシッターが立っていた。璃子はむすっとむくれながらベビーシッターに抱っこされている。
「璃子……」
名前を呼ぶと、ふいっと顔を背けられる。璃子がこんな態度をとるのは、朝からひと悶着あったせいだ。
キチンと説明しなかったせいなのだが、ロイヤルブルーのワンピースに着替えた藍里とお出かけするつもりになっていたのだ。
自分は留守番だとわかると、璃子の瞳はウルウルと潤みだし、とうとう泣き出した。
それからずっとこの調子だ。