内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「すぐに帰ってくるから、いい子でお留守番していてね」
「う~!」
璃子はいかにも不満げに指をしゃぶる。
これまで母ひとり子ひとりで、保育園以外では他人に預けられたことがない。不安がるのも無理はない。
「行ってくるね」
璃子がいくらごねようと、それでも藍里と蒼佑は出掛けなくてはならない。
藍里は璃子を振り切るようにして、後部座席に乗り込んだ。
三角美術館へ向かう道中は快適だったが、いつもそばにいる璃子がいないとやはり落ち着かない。
そんな藍里の様子を見かねた蒼佑が尋ねる。
「璃子が心配?」
「はい。小牧さんとシッターさんにお任せしておけばいいと、わかってはいるんですけど……」
小牧にもなにかあったらすぐに連絡してほしいと頼んであるが、心配の種は尽きない。
「大丈夫だ。藍里が考えているより璃子は成長している。指きりげんまんもしてきたしな」
藍里が車に乗り込んだあと、コソコソ璃子と話しているとは思っていたが、一体いつのまに?