内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「なにを約束したんですか?」
「ちゃんとお留守番できたら、海に行く約束をしたんだ。一緒に砂の城を作るんだ」
藍里は口をあんぐりと開けた。多忙を極める中で、海に行く約束をするなんて蒼佑は璃子にとことん甘い。
しかし、今回ばかりは責められない。蒼佑が璃子をなだめてくれたおかげで、無事に出発できたからだ。
「特大のお城を作ってとねだられても知りませんからね?」
「覚悟しているさ」
蒼佑はさも楽しそうにニヤリと笑うと、隣に座る藍里の手を取りそっと口づける。
「さっきは言いそびれたけど……今日の藍里はいつにもまして綺麗だ」
油断していた藍里は完全に不意を突かれた。手放しで褒められ、かあっと顔が熱くなる。
「あ、ありがとうございます!」
そうこうする内に車は無事、三角美術館へ到着した。