内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

「さあ、リニューアルオープンの目玉だ」

 蒼佑はそう言うと、藍里の腰を引き寄せた。
 特別展のエリアには、ひと際大勢の人が集まっている。
 エリア内の最奥には、大空を駆ける鷹が悠々と飾られていた。
 父の絵を見ていた人たちは蒼佑と藍里がやって来るなり、次々と近寄ってくる。

「リニューアルオープンおめでとうございます」
「海老原氏の絵を展示できるとは、どういう伝手があったんですか?」

 マスコミ関係者も何人かいたようで、即席のインタビュー会場のようになる。
 蒼佑は集まった人達に丁寧に答えた。

「すべて妻の藍里のおかげです。彼女が海老原氏の絵を展示する許可をくれました。多くの方にご覧いただければ幸いです」

 蒼佑が左手を胸にあてこうべを垂れると、自然と拍手が湧き上がる。
 その後も、プレオープンに招待された人たちは父の絵の前に立ち止まっては、驚きや懐かしさがこもった眼差しを向ける。
 藍里は蒼佑の傍らで、彼らの様子を黙って見つめていた。
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