内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
(どれにしよう)
リニューアルにより売場面積が二倍に拡張されたミュージアムショップには、さまざまなグッズが販売されている。
藍里は璃子の喜ぶ姿を頭に思い浮かべつつ、ちりめんの折り紙とマスコットキャラクターのぬいぐるみを選んだ。
璃子のことを考えていると、鬱々とした気分もいくらかマシになる。
レジで会計を済ませたら、早々に店から立ち去る。
「ああ、よかった。藍里さんったら、こんなところにいたのね」
ミュージアムショップを出て蒼佑のもとに戻ろうとしていた藍里に声を掛けてきたのは、先ほど別れたばかりの麗佳だった。
「あなたにお話があるの」
「なんでしょうか?」
「蒼佑さんと別れてくださる?」
「え……?」
開口一番、頭を殴られたような衝撃が走る。
「蒼佑さんてば、本当に困るわ。子どもがいるからって、結婚まですることないのに。まあ、そんな真面目なところも素敵なんだけれど……」
麗佳はやれやれと呆れたような、それでいて惚気気味に言ってのけた。
「お金がほしいなら私が差し上げるわ。だからあなたは安心して離婚してちょうだい。子どもは私と蒼佑さんが立派に育ててみせますから」
麗佳はさも当然のように主張した。