内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
6.もう迷わない

 お昼休みになり、リフレッシュエリアで郡司と一緒にお弁当を食べていた藍里は、食事を終えるとおもむろにバッグから封筒を取り出した。

「郡司さん、よろしかったらこちらどうぞ。ご家族の分もあります」
「え、本当にいいの!? しかも家族の分まで?」
「夫も『ぜひご家族で』と言ってましたから」

 三角美術館の特別招待チケットが入っている封筒を渡すと、郡司は大いに喜んでくれた。

『行きたいけど、全然予約がとれないのよね~』

 郡司がそう漏らしていたことを蒼佑の耳に入れたら、わざわざチケットを手配してくれた。
 現在、三角美術館の入場券は専用予約サイトでは三か月先まで完売となっているが、特別招待チケットがあれば予約なしでいつでも入館できる。
 三角美術館は先週正式オープンを迎えたばかりだ。
 来館者数は当初の予想を大きく上回り、平日も大混雑らしい。
 リニューアルの目玉とされた父の絵も各所で評判になり、すでにリピート客も現れ始めている。
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