内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「璃子のお迎えは母親である私の役目です」
勝手な行動をとられては困ると非難したつもりだったが、麗佳は藍里など眼中にないようで、素知らぬ顔で続けた。
「璃子ちゃんはこんなところに預けられているのね。朝から晩まで狭い保育園の中なんて本当にかわいそう。私が母親だったら愛する蒼佑さんの子どもをもっとのびのび育てるわ。たくさん甘えさせてあげられるのに」
そして、トドメを刺すように最後に付け加える。
「私なら完璧に母親役をこなせるわ」
藍里はなにも反論できず、グッと押し黙るしかなかった。
働く母親として一番言われたくないことを言われてしまった。
なにも言い返さない藍里を見て、麗佳はクスリと笑う。」
「今日のところはこれで失礼しますね」
麗佳は藍里の存在を無視し、園長先生に会釈をした。
妻としての自信も母としての誇りもなにもかも虚しく崩れ落ちていく。
(麗佳さんは本気だ……)
彼女は蒼佑だけでなく、璃子まで奪うつもりなのだ。