内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
「おはようございます、奥様。璃子お嬢様」
「おはようございます、小牧さん」
「おはようございましゅ!」
いつも通り小牧と朝の挨拶を交わしてから、ふたりは椅子に座った。最近は大人しく朝食の支度を待つのにもようやく慣れてきた。
「いただきま〜す!」
今日も璃子は朝から食欲旺盛で、小牧が作った特製の卵焼きをもぐもぐと頬張っている。
今日の朝食は和食だ。出汁からとったお味噌汁とご飯と焼き鮭がテーブルに並べられている。
お馴染みになりつつある朝の風景だが、今日はひとつだけ異なる点がある。
「せっかくのお休みなのに、旦那様がお仕事なんて本当に残念ですねえ」
小牧はさも残念そうにしみじみと言った。
この日、蒼佑は朝から仕事で出掛けており不在だ。帰りは深夜になると昨晩聞いた。
「仕方ないですよ。忙しい人ですから」
きっと今までは藍里たちの生活リズムに合わせ、スケジュールを調整してくれていたのだろう。