内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

(蒼佑さんが仕事でよかった)

 こんな気持ちのまま顔を合わせずに済んで、ホッとしている自分もいる。

「お仕事が終わったら飛んで帰ってくるでしょうね。こんなにかわいらしいお嬢様と知的で可憐な奥様がお家で待っているんですから」

 小牧からニッと朗らかに笑いかけられた藍里は曖昧に笑い返すばかりだ。

「あの、小牧さん」

 藍里は箸を置き、厨房に戻ろうとする小牧を呼び止めた。

「はい、なんでしょう?」

 蒼佑のいない今がチャンスだ。
 三角家の家政婦として長年働き、彼をよく知る小牧にずっと疑問に思っていたことを尋ねる。

「蒼佑さんの結婚がどうして破談になったのか、ご存じでしたら教えていただけませんか?」

 ずっと不思議に思っていた。
 三年前、あのふたりは結婚をスクープされるほどの仲だったはずだ。
 いまだに蒼佑を熱烈に愛する麗佳の態度からして、愛情がなくなったとは考えにくい。
 蒼佑本人に直接尋ねる前にまずは小牧から情報を集めておきたい。
 そんな思惑があったわけだが、当の小牧は困ったように首を傾げた。
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