内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

「結婚? 破談? いったいなんの話でしょうか?」
「え?」

 逆に尋ね返され、今度は藍里がうろたえる番だ。

「本当になにも知らないんですか?」
「そうですねえ。もしかしたら私どもの知らないところでそういうお話があったかもしれませんけど……。旦那様から結婚するっていうお話を直接伺ったことは一度もありませんね。仕事関係の方を除けば、旦那様がこの屋敷に女性を連れてきたのは奥様が初めてですし」

 小牧は言葉を選びながらも、包み隠さず正直に答えようとしてくれた。
 嘘をついたり、誤魔化しているようにはとても思えない。

「答えてくださってありがとうございます。変なことを聞いてしまってごめんなさい」

 藍里は小牧にお礼と謝罪を述べると、今度こそ目の前の味噌汁に意識を集中させた。

(どういうことなの?)

 藍里が蒼佑と距離を置くきっかけにもなったあのゴシップニュースは、間違いだったのだろうか?
 いくら考えても結局のところ、真実は本人に聞いてみないとわからない。
 しかし、藍里は蒼佑に真実を尋ねる勇気を持てないまま悶々と数日を過ごした。
< 144 / 187 >

この作品をシェア

pagetop