内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
7.忍び寄る気配
ロータリーに停められた車にスーツケースが積み込まれると、蒼佑はクルリと後ろを振り返った。
「じゃあ、行ってくる」
「気をつけて行ってきてくださいね」
「ああ。留守を頼む」
蒼佑は玄関まで見送りにやって来た藍里と璃子の頬にそれぞれキスを贈った。
彼はこれから出張でバンコクまで行くそうだ。
国内なら日帰りや一泊で住むことが多かったが、国外となるとそうともいかない。
五泊七日の海外出張は、蒼佑をやたらと感傷的にさせた。
「璃子もママの言うことをよく聞いていい子にしているんだぞ」
「パパ?」
名残惜しそうに何度も頭を撫でてくる蒼佑に、いつもと違う雰囲気を感じとったのか、璃子は不思議そうな目で蒼佑を見つめている。
「パパはお空の向こうの国までお仕事に行くんですって。璃子もがんばれって言ってあげて」
「がんばれ〜!」
「ありがとう、璃子」
蒼佑は璃子を抱っこする藍里ごとひしと抱き締めると、何度も後ろを振り返りながら車に乗り込んでいった。