内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
「ママ〜? どうしたの?」
就寝前の絵本の読み聞かせの最中、ページをめくる手が止まった藍里を璃子がゆさゆさと揺さぶる。
「あ……。ごめんね、璃子」
昼間の出来事を思い返し、ぼうっとしていた藍里は慌てて続きを読みあげてやる。
「はい、おしまい」
絵本を読み終えると、ベッドサイドの灯りを消す。璃子は毛布の中に潜り込み、ひょきっと頭だけ出した。
「パパはどこ~?」
蒼佑が留守にしてから璃子は毎日、寝る前にパパの居場所を尋ねてくるようになった。璃子もまた藍里と同じように、蒼佑をかけがえのない家族として認めているのだろう。
「パパはまだお空の向こうの国よ。もうすぐ帰ってくるからね」
「しょっかあ……」
残念そうに声のトーンが下がる璃子の頭をそっと撫でる。
「おやすみ、璃子」
璃子が目を瞑ったのを確認し、胸の辺りをトントンと手のひらで叩いてやる。もともと寝つきのいい璃子は、十分ほどですぐに寝入ってくれた。