内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「ふう……」
寝かしつけを終えた藍里はリビング戻ってくるとソファにもたれ、ひと息ついた。
いつもなら、着替えてコレクションルームへ行くが、今日はとても作業をする気にはなれなかった。
昼間の叔父の件を思い出すだけで、憂鬱で身体が動かなくなる。
まさか父の絵の転売先を蒼佑に斡旋しようとするなんて。
(蒼佑さんが海外出張中で本当によかった)
また要らぬ心配をかけるところだった。身内の恥を晒すのは一度で充分だ。
譲治がなにを考えているかわからないが、大空を駆ける鷹は三角美術館で展示されている以上、勝手に持ち出すことは不可能だ。
アトリエに置いておくより、はるかに安全に違いない。
(でもその先は?)
あの叔父のことだから、また似たような騒動を起こす気かもしれない。
再び怪しい動きを始めた以上、アトリエに保管してある他の絵もどこかへ移すべきだ。
(でもどうやって?)
藍里ひとりの力ではとても父の絵すべてをアトリエから移すのは不可能だ。
頭を悩ませていたそのとき、藍里のスマホが着信を知らせた。
叔父からの連絡かと思い一瞬身構えたが、よくよく画面を確認すれば蒼佑からだった。
藍里はすぐさまスマホを耳に当てた。